それじゃ、愛をおひとつ20071209(Sun)

「………土方さん。」
「…なんだ?」
「土方さん。」
「あ?」
「……。」
「いてぇな、おい。」

膝だの太股だのを撫であげる手に痺を切らして津練り上げる。
何、堂々とセクハラしているんですか副長。いくら久しぶりだからってやめろっつーの。
私は土方さんの膝の上に、後ろから抱きかかえられるように座らされていた。

「セクハラで訴えてやりましょーか、土方十四郎さん。」
「別にいいじゃねーか。減るもんじゃねぇし。」
「いいわけあるか!」
「……。」
「耳元で甘えたって無駄です。放せや――っ!」

ジタバタジタバタ暴れるが土方さんは放してはくれない。
それどころか、余計に腕に力が入って、私の体を絞めていく。苦しい苦しい。

「ヤダヤダ苦しい土方さん放して―…。」
「じゃあ、暴れんな。」

ならそこで喋んな。
人の肩に額をのせる土方さんの声が、うまい具合いにくぐもって聞こえて心臓に悪い。
一週間、会えないの我慢して飢えてたのは土方さんだけじゃないんですからね!放せ馬鹿ぁあ!

「ぐええ―…っ!」

ぎゅううううっといっそう腕に締め付けられて、喉から変な声が飛び出る。
なんかもう少しで内臓的なものが口からでる!これ絶対でるううう!!!
バンバンバンバンと腕を叩くと少しだけ力を緩めてくれた。

「何すんですか!」
「もっと色気のある声出せよな、お前。」
「うっさいわ!!よ、余計なお世話だコノヤロー!!」

あ―、どっかの銀髪の口調がうつったと頭の片隅で思いつつ、
一週間ぶりに会った恋人に、なんちゅう仕打をするんだと悪態をつく。
すると津練った仕返だと返ってきたもんだから、コイツ本気で殴ってやろうかと手を握る。

「………。」

握った拳に、土方さんの大きな手が重なって。
耳元で囁かれた超低音ボイスに、ふにゃっと力が抜ける。
これじゃあ敵の思う壺じゃないか、畜生。

「……。」

求めるような甘い声で名前を呼ばれて、うっと詰まってしまう。
自分の顔が真っ赤に染まっているのを覚悟しながら振り向くと、土方さんの安心したような顔がそこにあった。
あ―…、そういえばジミーが3日も書類整理をしていて寝ていないって言ってたなぁ。

「…隈。」

目の下を、そっとなぞったら、土方さんは瞳を伏せた。
出張で一週間も出掛けていた私も、土方欠陥症だったけど、それは土方さんも変わらなかったのかなぁ…、だといいな。なーんて。
私の出張決めたのは間違いなく目の前のコイツなんだけれど。

頬を撫でた手に、すりよってきた土方さんが愛しくて、
普段なんか絶対そんなことをしないけど、
3日間と一週間のご褒美として、

「土方さん…。」

唇をひとつ、私から重ねた。