「いだっ!……っ。」 斬り合いなんてこんな職業じゃ珍しくもなく、 額を刀の先でかすめられ、ピリっと軽い痛みが走った。 大袈裟に反応して相手が怯んだ一瞬をついて斬りつけると、もうそこに息はなく、 後ろから斬りかかってくる別の志士の刃を受け止める。 同情なんてかけてられない。情けなんてかけてられない。 私だって、今この時は、生きることに必死なんだ。だけどまぁ、 「悪いね…。」 呟いた声は、誰にも届いてなんかいないけれど。 とりあえず自分のまわりにいた奴らだけ斬り捨てた。 つ―、と額から流れてきた血が鼻のよこをつたって、 唇に届く前に舐めとれば、 「きょーあーくはーん。」 沖田隊長に見られたらしい。 今の動作はどっかの漫画にでてくる悪役みたいだった、とかなんとか言われた。 え―…、と言い返す前に走ってくる足音が聞こえて沖田隊長と一緒に振り向く。 「ぎゃああああああああああ!!!何顔怪我してんの――――っっっ!!」 山崎さんが叫んだ。 「まったく、だって女の子なんだからさぁ…。」 なんで毎回毎回刀傷つけて帰ってくるんだよ、とため息をつきながら、私の額に包帯を巻いていく山崎さん。 しゅるしゅると包帯の音と時折髪を霞める指先が心地好くて目を閉じた。 「なんで今日よりによって顔になんか…。」 「なんていうか……、避け損ねました。」 きゅ、と額に巻かれている包帯がしまって、治療完了。 すっと山崎さんの両手が頭から離れていく。 私の頭を抱きかかえるような体制だったので、すぐ近くに山崎さんの胸板があって、 それも同時に離れていく気配がして、あーあ、もったいないなぁと思う。 「…?」 無意識に、山崎さんの服を握っていた。 不思議そうに向けられる視線と私の視線が絡まる。 私は衝動的に、服を掴んだ腕に力を入れて山崎さんを引き寄せる。 「…ん……。」 触れるだけ、唇を重ねた。 「?」 唇を離して目に飛込んだのはやっぱり、びっくりして目を見開く山崎さんで、 「…不謹慎すぎるんですけど、怪我すれば、山崎さんに手当てして貰えるかな、って。」 凄く怒られたんだけど。 そんなことしなくてもいいから側にいればいいと言ってくれたので、まぁ、よしとしよう。 |