ひとりあそび20071229(Sat)

ふわっ、と揺れるような感覚がした。肩のところで跳ね上がった鬱陶しい髪の毛。
シャワーの後だろう。石鹸の香りが漂ってきた。乾かしきれなかったのか、毛先に雫。

「山崎さん、おかえりなさい。」
「あ、…うん。ただいま。」

困ったように笑う顔。何をしてきたのか分かったのが伝わったんだろうか。
うん。わかってますよ。時にはそれも監察の仕事だってことくらい。
こういうときは、自分の無表情がどれほど役に立つか、こんなときだけ自分の無表情に感謝する。

「山崎さん。」

早々に去ろうとしていた山崎さんを呼びとめて、トントンと自分の首筋を叩く。
一瞬固まって、はっとしたように首筋を隠した。
あ―あ、駄目だよ山崎さん。そんなんじゃ、

「監察失格ですよ?」

苦笑いを浮かべた表情のしたで、胸が痛い痛い痛いと悲鳴をあげる。
めったに表情をださない私の苦笑に驚いたのか、山崎さんは固まってしまった。
だから、そんなんじゃ監察失格ですよ?って。

「それじゃあ。」

今は、山崎さんと一緒に居たくないと思った。
私はただの数少ない平隊士だけど、山崎さんは貴重な監察方。わかってはいたものの、同じ真選組にいるとはいえ、仕事は違いすぎる。
時には仕事で女を抱くことだってあるだろう。
それに、私は何も告げてはいないのだから…、
だから、この思いを抱くのはお門違いというやつすぎる。

「……あ―あ。」

せっかく会えたのになぁ…。とため息をもらす。
だけど、だけど、耐えられるはずがなかったんだ。好きな人から違う女の人の香りをかぐなんて。

「やーまざーきさん…。」

歌うように呟いた声は辺りに染みて消えていく。

貴方が、好きです。